宮沢賢治 「雨にも負けず抄T」 「永訣の朝抄T」 「永訣の朝抄U」 「雨にも負けず抄U」 「銀河鉄道の夜」 「マッツィーニの言葉」


宮沢賢治 「雨にも負けず」 抄


雨にも負けず、風にも負けず

雪にも夏の暑さにも負けぬ、丈夫な体をもち

慾はなく、決して怒らず、いつも静かに笑っている

一日に玄米四合と、味噌と、少しの野菜を食べ

あらゆることを、自分を勘定に入れずに

よく見聞きし、分かり、そして忘れず

野原の松の林の陰の、小さな萱ぶきの小屋にいて

東に病気の子供あれば、行って看病してやり

西に疲れた母あれば、行ってその稲の束を負い

南に死にそうな人あれば、行ってこわがらなくてもいいといい

北に喧嘩や訴訟があれば、つまらないからやめろといい

日照りの時は涙を流し、寒さの夏はおろおろ歩き

皆に木偶の坊と呼ばれ

褒められもせず、苦にもされず、

そういう者に、私はなりたい




宮沢賢治 「永訣の朝抄T」


うまれで くるたて こんどは 

こたに わりやの ごとばかりで

   くるしまなあよに うまれてくる

おまへが たべる この ふたわんの ゆきに

わたくしは いま こころから いのる

どうか これが兜率の 天の食に 変わって

やがては おまへとみんなとに 聖い資糧を もたらすことを

わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ




宮沢賢治 「永訣の朝抄U」


けふのうちに 

とほくへ いつてしまふ わたくしの いもうとよ

みぞれがふつて おもてはへんに あかるいのだ

(あめゆじゆ とてちて けんじや)

うすあかく いつさう 陰惨な雲から

みぞれは びちよびちよ ふつてくる

(あめゆじゆ とてちて けんじや)



宮沢賢治 「雨にも負けず」 抄


日照りの時は涙を流し、

寒さの夏はおろおろ歩き

皆に木偶の坊
と呼ばれ

められもせず、苦にもされず、

そういう者に、私はなりたい




宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」 抄


カムパネルラ、

また僕たち二人きりになったねえ

どこまでもどこまでも一緒に行こう

僕はもうあのサソリのように、

本当にみんなの幸せの為ならば、

僕の身なんか百万遍焼いてもかまわない。



イタリア建国の志士 マッツィーニの言葉より


さらに深く

さらに幅広く


人々と連帯することによって

我々の力は何倍にも大きなものとなる

さらにその連帯は、

我々の果たすべき使命の舞台を広げる